2011年10月24日月曜日

エピクテートス 43 交渉術

エピクテートス


[43]


https://youtu.be/wv56oELPPCA



エピクテートス提要 43


交渉術


以下の文中の「提要」の和訳は岩波文庫『人生談義・下』(鹿野治助)からのものです
* * *

ケンガイ:エピクテートスの「提要」の 43 番をお願いします。
ケンナイ:43 番は:「すべての事柄には、二つの柄(え)があって、一方では運べるが、他方では運べない。もしも兄弟が不正をするならば、それを彼が不正をするという方からは把(と)るな、(それは運べない方の柄であるから)、むしろ彼は兄弟だ、一緒に育った者だという方の側から把るがいい。そうすれば君はそれを運べる方から把ることになるだろう。」とあるね。
ケンガイ:親子兄弟関係については、前にも出てきましたよね?
ケンナイ:うん、30 番にも出ていたね。
ケンガイ:昔のギリシャでは、親子兄弟関係のトラブルが多かったのですか?
ケンナイ:時代や地域に限られた問題ではないさ。現代のどこの国でもごく当たり前に見られる問題だよ。
ケンガイ:エピクテートス先生のアドバイスでは、いつも身びいきのほうを優先させるみたいですね?
ケンナイ:そうかもしれないけれど、交渉術という観点からは優れているね。
ケンガイ:どうしてですか?
ケンナイ:あなたの身内が社会的に何か不正をしたと仮定しよう。その人は親戚縁者たちからも非難され、孤立を深め、ますます不正な道に突き進む可能性が高くなるだろうね。
ケンガイ:でも、身内であっても、不正は社会的には許されないのではありませんか?
ケンナイ:それはそうさ。だから、場合によっては法の裁きを受けるだろうね。
ケンガイ:では、どうして親子兄弟の観点から捉えないとけないのですか?
ケンナイ:社会は法という手段によって裁定するだろうけれども、 不正をするに至った経緯を理解するという観点からは、あまり親切ではないね。行為には動機が有るし、動機が形成される過程を理解できるのはそばで暮らしていた人たちだよ。そのへんの消息を手がかりにして接触・説得できるのは、他人ではなく身内のほうが有利だね。話し合いの糸口を持っているということでは、身内が一番だからね。
ケンガイ:な~るほど。
ケンナイ:あなたにもいくらでも経験が有るだろうけれど、「物は言いよう」で、同じ内容を話す場合でも、相手が耳を傾けてくれる話し方と、最初からケンカ腰の話し方とでは、交渉の成否が分かれてしまうよね?
ケンガイ:まったく。
ケンナイ:そういうことからしたら、エピクテートス先生が言う「運べるほうの柄」を利用しないという手は無いね。
ケンガイ:そうですね。
ケンナイ:このことは自分の説得にも利用しないといけないね。
ケンガイ:自分の説得?
ケンナイ:あなたは一人の人間でも、修行に憧れるあなたと、修行に精勤できないあなたと、二人の自分がいるみたいでしょう?
ケンガイ:エヘヘ。
ケンナイ:そこで、憧れるだけのあなたに対して、修行をするように説得すべきあなたがいないといけないわけだね。
ケンガイ:どうやって説得するのですか?
ケンナイ:修行をしないあなたのほうを不正ということにして、「おい、こら、どうせお前はナマクラだから、修行なんかできないだろう?」と語りかけるのと、「少しずつでも修行すれば、汚れた色眼鏡も徐々にきれいになって、美しい光景が見えてくるよ。」なんて具合に語りかけるのとでは、だいぶ違うんじゃないの?
ケンガイ:そんなふうに自分に語りかけるなんて、考えてみたこともありませんでした。
ケンナイ:エピクテートス先生から、権内の交渉術を学んでごらん。